米津玄師さんの愛読書でもある小説『スノードーム』の紹介

 私は、中学生まで割と読書することが多いタイプの子どもでしたが、部活などの他のことで次第に読書習慣がなくなっていきました。そんな私が久しぶりに読んだ1冊で、読書欲が再熱したきっかけになった小説が今回紹介する『スノードーム』になります。

この本は、音楽アーティストとして活動している米津玄師さんの愛読書でもあり、私もそれが理由で気になってこの本を手に取りました。

米津玄師さんの過去の投稿/Xより

著者アレックス・シアラーさん原作「The Speed of the Dark」を石田文子さんが日本語訳した今作「スノードーム」は、世界観にグッと引き込まれるほどに丁寧な描写の中、愛をテーマにほろ苦いストーリーを味わうことができました。

読後は、この小説の世界観が米津さんの作曲にも影響を与えたんだろうなと感じることもできたため、まだ読んだことのない人はもちろん、米津ファンの人には是非一度読んで欲しい作品となっています。

スノードーム
スノードーム

『スノードーム』あらすじ

ある日、若い科学者クリストファーが姿を消した。彼は、ひたすら「光の減速器」の研究を続ける、ちょっと変わった青年だった。失踪の際、彼は同僚のチャーリーにある原稿を残した。そこには、不思議な物語が綴られていた。

「スノードーム」紹介分より

この物語は、チャーリーという男性の視点から始まります。何事もじっくりコツコツを心がける研究者のチャーリーは、若い才能人達が次々と消えていく中、常に平凡に仕事をこなしていきます。

彼とは正反対に、チャーリーの同僚であるクリストファーは「光の減速器」という無理難題について、昼も夜も休みなく研究を続けていました。それこそ、他のすべてを捨てるほどに。

しかし、そんなクリストファーでも大切にしているものがあり、それが空っぽの「スノードームでした。チャーリーが興味本位で手を伸ばそうとした際には、怒りをあらわにしてしまうほどにクリストファーにとってそのスノードームは大切だったのです。

そんなクリストファーも、研究のしすぎで限界が来てしまったのか突如失踪してしまいます。それも、大切にしていたスノードームチャーリー宛のある原稿を残して
その原稿には、クリストファーの生い立ちと、スノードームについての真相が記されていました….

このように物語は、クリストファーの残した原稿を基に進んで行きます。

とんがりスノードーム
サイズ 直径8.5 / H8.0 cm素材  ABS,アクリル,ポリレジン,ステンレス,PET※性質上、表示サイズと若干の誤差が出る場合があります。※環境により画像と実際の色が異なる場合がございます。

登場人物

まずは、この物語の主要人物を紹介します。

クリストファー・マラン

若い物理学者で光の減速機について研究していましたが、ある日突如失踪します。
失踪時に残した原稿には、彼の過去について記されていて…

エルンスト・エックマン

「ありえない美の館」というギャラリーを経営している男性。
クリストファーの残した原稿は彼の目線で語られます。
見た目にコンプレックスがあり、性格がややひねくれ気味。

ポッピー

動く銅像のパフォーマンスというダンスで生計を立てている若いダンサー。
エックマンに好意を寄せられますが、彼女はその気が一切なく…

ロバート・マラン

クリストファーの父で、似顔絵描きをしている画家。
ポッピーと良い関係を築いており、クリストファーと3人で過ごすことも。

チャーリー

物語の始まりは、彼の目線で始まります。
クリストファーの同僚で、彼の残した原稿を預かります。

視点はチャーリーからエックマンへ

 クリストファー失踪後、この物語はエックマンの目線で描かれます。このエックマンは、「目に見えないほど小さな彫刻」を作ることのできる天才的な芸術家ですが、低身長に醜い見た目ということもあり周囲から奇妙な目で見られることが多く、親からですら一度も愛をもらうことがありませんでした…

それゆえに他人を毛嫌いしている彼でも愛している人が存在しており、それが踊り子の「ポッピー」と幼少期の「クリストファー」です。

晴れの日も雨の日も衣装を着て箱の上に立ち、お金が箱に入れられると踊り出す彼女にエックマンは魅せられてしまいます。しかし、彼女のことを想うエックマンとは正反対に、ポッピーは彼に対してさほど興味を示していませんでした。

反対に、クリストファーはエックマンの創る彫刻に強く興味をしており、そんなクリストファーをエックマンも愛していました。

そんな2人と「恋仲」「家族」という、強い愛情で結ばれたロバートという男にエックマンは強い嫉妬と憎しみを覚え…

 

このように今作は、家族愛のような温かい「愛」が描かれる一方で、孤独故に歪んでしまった寂しい「愛情」が描かれます。大切な家族も素敵な恋人もいるロバートと対比して、エックマンはそれらを手に入れることが叶わず、次第に心も歪み切ってしまい…取り返しのつかない事件を巻き起こしてしまいます。

この先の物語からは、原題である「The Speed of the Dark」の要素やエックマンの孤独や歪な支配・独占などの欲望、スノードームの謎について描かれていきますので、気になる方は是非読んでみてください。

最後に

 エックマンが起こした事件を知ったとき、はたして彼を責めることができるでしょうか?私は、完全に彼を責めることができませんでした。それは、どこかエックマンを私自身に重ねてみてしまっているのでしょうね。

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